本だけじゃない!海外の図書館で借りられる意外なもの
- Karin
- 8月4日
- 読了時間: 4分
先日参加した三田図書館・情報学会の月例会で、慶應義塾大学の松本直樹先生による「海外の公共図書館に見る制度及び運営の動向」という講演を聴きました。
松本先生は約1年間にわたり、台湾、ポーランド、英国、カナダ、米国、オーストラリアなどを訪れ、約230館もの図書館を調査されています。講演では各国の図書館制度やサービスについて、現地で撮影されたたくさんの写真とともに紹介してくださいました。
そのなかで海外の図書館で広がっているLibrary of Thingsについてご紹介します。
直訳すれば「ものの図書館」。つまり、図書館で貸し出されるのは、本や雑誌、DVDだけではないのです。
望遠鏡からカラオケマシンまで借りられる!
講演で紹介されたカナダのバリー図書館(Barrie Public Library)では、実にさまざまな「もの」を借りることができます。
例えば、
バードウォッチングキット
望遠鏡
金属探知機
楽器
カラオケマシン
ボードゲーム
釣り道具
卓球やサッカーなどのスポーツ用品
プロジェクター
デジタル化キット
認知機能を支援するためのキット
などです。講演資料には、さらに自然観察用キット、サーマルカメラ、太陽観測用双眼鏡なども挙げられていました。
実際にバリー図書館の公式サイトを見てみると、「Library of Things」のページには現在も驚くほどたくさんの貸出品が掲載されています。自転車修理キット、園芸キット、スノーシュー、ピックルボール用品、ラドン検知キットなどもあります。(バリー図書館)
「鳥を見てみたい」から学びが始まる
特に面白いと思ったのが、バードウォッチングキットです。
バリー図書館のキットには、双眼鏡だけではなく、鳥を調べるための本、携帯用のガイド、観察した鳥を記録する共有ジャーナル、地域のトレイルガイドなどが一緒に入っています。つまり、単に「双眼鏡を貸す」というサービスではありません。(バリー図書館)
「鳥を見てみたい」と思った人が図書館でキットを借りる。実際に外へ出て鳥を観察する。分からない鳥がいたら本やオンライン情報で調べる。そして記録する。
こう考えると、図書館で借りた「もの」が、体験や学びへの入口になっていることが分かります。
これはとても興味深い図書館のあり方だと思いました。
楽器だって図書館で借りられる
同じカナダのトロント公共図書館では、楽器を無料で借りることのできる「Musical Instrument Lending Library」があります。
ギター、ウクレレ、ボンゴ、バイオリンなどを図書館カードで借りることができ、貸出期間は3週間。さらに、トロント交響楽団の演奏家による楽器の入門動画にもつながっています。(tpl.ca)
ここでも、単に「楽器という物を貸す」だけではなく、借りる→やってみる→学ぶという流れが生まれています。
高価な楽器をいきなり購入するのは難しくても、図書館で借りることができれば、「ちょっとやってみたい」という気持ちを実際の体験につなげることができます。
オーストラリアでも「もの」を貸し出す図書館
講演で取り上げられていたオーストラリアのヤラ・プレンティ地域図書館(Yarra Plenty Regional Library)にも「Library of Things」があります。
公式サイトを見ると、DIY用の道具、IH調理器、家庭のエネルギー使用状況を調べるためのキット、子ども向けオーディオプレーヤーなど、さまざまなものを貸し出しています。(Yarra Plenty Regional Library)
「図書館で何を貸すのか」という発想そのものが、日本で一般的にイメージする図書館よりもかなり広いように感じます。
なぜ図書館が「もの」を貸すのだろう?
こうした事例を見ていると、「図書館とは何をするところなのだろう」と改めて考えさせられます。
本を貸すことだけが目的なら、望遠鏡や楽器、バードウォッチングキットを貸す必要はありません。
しかし、図書館の役割を「人々が知りたいことを知り、やってみたいことを試し、新しい世界に出会うことを支える場所」と考えれば、「もの」を貸し出すことにも意味が見えてきます。
例えば、
望遠鏡を借りる → 星空を見る → 宇宙について調べる
双眼鏡を借りる → 鳥を見る → 図鑑で名前や生態を調べる
楽器を借りる → 演奏してみる → 音楽について学ぶ
というように、「もの」と「情報」と「体験」がつながります。
そしてもう一つ大切なのは、経済的な負担を小さくしながら、新しいことを試せるという点です。
「興味はあるけれど、買うほどではない」「子どもがやってみたがっているけれど、続くか分からない」。そんなときに、図書館から無料で借りることができれば、最初の一歩を踏み出しやすくなります。
公共図書館に本や情報だけでなく、そうした体験への入口となる「もの」があれば、子どもたちが自分の興味から学びを始めるきっかけになるのではないでしょうか。
「本を借りる場所」から、「やってみたいを応援する場所」へ。
今回の講演で紹介されたLibrary of Thingsは、これからの公共図書館の可能性について考える、とても興味深い事例でした。

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